低侵襲を目指して区域切除や胸腔鏡、ロボット支援手術を積極的に取り入れています。
呼吸器外科では、肺腫瘍・縦隔腫瘍・気胸・膿胸・外傷などの手術を行なっています。国内で肺がんは、悪性腫瘍での死亡原因の第一位になっていますが、その治療成績は抗がん剤治療や医療技術の進歩により向上しています。当科では、小さな傷で行う胸腔鏡手術やロボット支援手術で体に負担の少ない手術を心掛けています。また、肺の切除量を少なくする縮小手術も積極的に取り入れ、ご高齢の方や他に病気を持っておられる方でも手術による治療が行えるようにしています。進行肺がんでは、豊富な経験を有する呼吸器内科や放射線科、病理診断科と連携をとり、薬物治療や放射線治療を併用した手術を安全に提供できるようにしています。手術後は概ね1週間程度で退院できます。身体にやさしい手術で、根治性に加え体の負担が少なく早期社会復帰できる治療を目指しています。
原発性肺癌・転移性肺腫瘍・縦隔腫瘍・気胸・嚢胞性肺疾患・縦隔腫瘍・良性肺腫瘍・胸膜腫瘍・胸壁腫瘍・外傷(血胸や肋骨・肺損傷)など
胸腔鏡という内視鏡を用いることにより小さな創で手術をおこなう方法です。モニター視のみによる完全胸腔鏡手術で行います。
当科では1994年に導入し、現在では呼吸器外科手術の約90%を胸腔鏡手術で行っています。原発性肺癌、転移性肺腫瘍、気胸、肺嚢胞、膿胸、縦隔腫瘍等のいろいろな病気が対象になります。
胸腔鏡手術の利点として術後の痛みが軽い、創が目立たない等があげられます。
2018年度より、ロボット支援肺悪性腫瘍手術が保険で認められ、その後ロボット支援肺癌手術が行われることが増えています。当院でも、ダヴィンチ(ロボットの名前)を導入し、2019年より肺癌手術を行っており、2023年より縦隔腫瘍手術を行なっています。ロボット支援手術は、従来の胸腔鏡手術に比べて、合併症の発生や出血量が少なく、痛みが軽いという報告があります。
長所として、3Dモニターによる、より正確な体の構造の把握と、鉗子の可動域が大きいことによる手術操作のやりやすさの増加のために、より正確な手術になる可能性があると期待されます。また、コンピューター制御により手のふるえなどの影響も抑えることが可能とされます。狭い領域での操作が必要なリンパ節や縦隔腫瘍を取り出す時にメリットがあると考えられます。特に縦隔腫瘍では、これまで胸骨切開による大きな創の開胸手術が必要でしたが、ロボット支援手術の導入により、4箇所の小さな創で腫瘍をとりだすことが可能になりました。
ロボット支援下剣状突起下アプローチ胸腺摘出術は、剣状突起下からロボット内視鏡カメラを挿入し、1cm程度の操作孔・助手孔を設置し、4箇所の創により縦隔腫瘍や胸腺を摘出する方法です。これまで胸骨を縦断する胸骨正中切開による大きな創の開胸手術が必要でしたが、手術支援ロボットを用いる事で、小さな創で腫瘍を摘出することが可能となりました。術後の回復が早く整容性にも優れますので、若年から高齢まで幅広い患者さまに大きなメリットがある方法と考えます。
大きな創で手術を行う方法です。
胸腔鏡手術が困難な場合、開胸手術を行います。進行肺癌に対しては安全性や根治性が落ちることがないように開胸手術を選択する方が適切な場合があります。
肺癌に対して治癒率の高い治療法は切除であり、完全切除可能であれば切除を基本方針としています。進行肺癌については他の治療法と組み合わせて治癒率の向上に努めています。呼吸器外科、呼吸器内科、放射線科、病理診断科でカンファレンスを行って治療方針を検討します。術前術後の治療は化学放射線治療の専門家である呼吸器内科医、放射線治療医が担当します。
l期、ll期の患者さんには原則的に手術を行い、切除した癌を詳しく病理検査した結果により、必要であれば術後抗がん剤治療を行います。lll期の患者さんは、抗がん剤や放射線治療などの他の治療との組み合わせを十分に検討した上で手術を行うかどうか決定します。
ほとんどの場合、胸腔鏡手術やロボット支援手術で行います。肺癌手術は肺を多く切除する肺葉切除が原則ですが、最近は、早期の肺癌の場合は切除量を減らしても大丈夫という研究結果がでています。肺をどれだけ切除するかどうかが体への負担に大きく影響しますので、早期の肺癌で肺をたくさん切除しなくてもよい場合や肺機能が不十分なために肺を切除する量を少なくしないといけない場合には肺区域切除や肺部分切除という肺をたくさん残せる術式を積極的に行っています。
胸腔鏡手術やロボット支援手術で、開胸手術と同様の手術を行える場合が多く、胸腔鏡手術やロボット支援手術を行うことが多いです。ただし、難しい場合は安全性と癌の根治性を保つために開胸手術を行います。
ll期の場合と同じです。ただし、特に癌が胸壁や大血管などに及んでいる場合などは、それらも一緒に切除する必要があるため開胸手術が必要です。
手術以外の方法で治療する場合が多いです。ただし、転移が1か所だけで転移の数も少ないときは手術が有効な場合があり、治癒のチャンスを逃さないように手術も検討します。
手術の影響により合併症(治療を要するような肺からの空気漏れ、不整脈、膿胸、脳梗塞など)が生じることがありますが、できるだけ減らすように努力しています。高齢の方や、肺機能が悪い方には可能であれば胸腔鏡手術、区域切除等の体に対する影響の少ない手術方法を選んでいます。循環器系や神経系の病気をお持ちの方も多いですが、当院にはそれぞれの専門科があり対処しやすいのも良い点と考えています。
5年間の手術関連死は0%, 在院死は0.3%(間質性肺炎の急性増悪1名)でした(2018-2023年に手術した症例での検討)。
気胸の治療には安静、胸腔ドレナージ、手術、胸膜癒着術などがあります。
軽度の気胸の場合、入院または自宅で安静にしていただくことで治癒することも多いです。
胸腔に管(胸腔ドレーン)を入れて空気を外に出すことにより、しぼんだ肺をひろげます。基本的に入院して治療します。肺からの空気もれが自然に止まるのを待ちます。気胸になった原因は残るので、再発がよくあります。
胸腔ドレナージで治癒しない場合や、一度治癒しても再発した場合に行います。最初から手術を選択する場合もあります。モニター視のみによる完全胸腔鏡手術で、2~3箇所のportによる小さな創で行います。
胸腔ドレーンから薬剤を胸腔内に注入することにより、炎症をおこして肺を癒着させて空気もれを止める治療です。手術が不適当な場合に行います。
胸腔鏡手術を基本にしています。気胸の原因となるブラを切除したり、縫い縮めます。術後再発は一般的に約10%とされ、当院でも約8%の方に再発を認めました(2017-2022年に手術した症例での検討)。
疾患名 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|---|
原発性肺癌 | 73 | 95 | 197 | 88 | 107 |
転移性肺腫瘍 | 9 | 8 | 13 | 19 | 19 |
気胸 | 17 | 15 | 8 | 23 | 12 |
縦隔腫瘍 | 13 | 10 | 13 | 8 | 2 |
その他 | 40 | 39 | 33 | 38 | 35 |
合計 | 152 | 167 | 174 | 176 | 175 |
ロボット支援手術 103例
2023年4月より赴任しました。肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、気胸、感染性肺疾患、胸壁腫瘍などの治療を行なっております。低侵襲手術を基本として、隣接臓器合併切除や血管・気管支形成などの拡大手術も行います。内科・外科・病理診断科の先生と相談し個々の患者さんに合った治療を行っています。ご不安な事があればお気軽にご相談ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
一診 | 担当医 (病診) | 担当医 (病診) | 上島 | 担当医(病診) | |
二診 | 石原 |
© 2025 Japanese Red Cross Kyoto Daiichi Hospital.
呼吸器外科の手術を担当しています。対象疾患は肺癌、転移性肺腫瘍、気胸、膿胸、炎症性肺疾患、縦隔腫瘍、胸壁腫瘍、外傷等です。手術は縮小手術から拡大手術までおこなっており、体に影響の少ない胸腔鏡手術やロボット支援手術も積極的に取り入れています。また、呼吸器内科と密に連携しており、外科的治療と内科的治療を柔軟にうまく組み合わせることが可能なことも良い点だと思います。外来診察日は木曜日です。呼吸器疾患で手術が必要な方、ぜひ御相談下さい。