脳卒中には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血があります。近年、人口の高齢化や生活習慣病の増加などに伴い、特に脳梗塞の患者数は増加し、その死亡率も高くなっています。また脳出血やくも膜下出血はひとたび発症すると致命的になることも多く、決して軽視できない疾患です。そしてこれら脳卒中は、近年、認知症や寝たきりの原因疾患として重要な疾患とされ、社会的な関心も高まっています。
当センターは2001年6月に、超急性期の脳卒中患者さんを24時間体制で受け入れ、集中的に治療を行うために設立されました。この間、毎年300例以上の患者さんを受け入れ、治療を提供してきました。脳卒中は、急性期治療がその後の回復に大きく影響を与えるため、当センターでは、脳神経・脳卒中科、脳神経外科、救急科医師をはじめ、看護師、放射線技師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカーなど、多職種によるチーム医療を実施しています。この体制を活かし急性期治療の成績向上を目指して日々奮闘しています。
急性期脳梗塞に対する再開通治療は、本邦における2005年のtPA静注療法の国内承認、2010年の脳血栓回収機器(Merci)の薬事承認、2012年のtPA静注療法の適応時間の4.5時間までの延長などを受け、当センターでも日常診療として数多くの方に実施してきました。脳血栓回収療法は今までエビデンスが未確立でしたが、諸外国での臨床研究の結果を受け、2017年9月に本邦の脳卒中ガイドラインでも遂にグレードAの治療(強く勧められる治療)となり、より効果的な治療として広く認知されています。
またくも膜下出血・破裂脳動脈瘤に対しては、その病変の部位やサイズ、患者さんの状況などを考慮し、開頭手術(クリッピング手術)とカテーテル治療(コイル塞栓術)を適切に使い分けて治療しております。
救命救急センター処置室では、迅速かつ適切な診断と治療を行うために、気道と静脈路の確保、循環器系の観察および神経学的評価をおこない、速やかにCTやMRI、場合によっては脳血管撮影を行い、正確に病態を診断するようにしております。その上で、その結果を患者さんおよびご家族にできる限り分かりやすく説明をさせていただき、ご理解をいただいた上で治療をおこなうようにしております。救急処置室での処置と初期治療が終了した後は、救命病棟(A2病棟)に入室します。より重症な方は集中治療室ICUに入室することもあります。救命病棟では、呼吸や循環の状態をモニタリングしながら、さまざまな神経症状の変化を早期にとらえ、症状の進行を抑えるための適切な治療をおこないます。
超急性期治療としての再開通治療、tPA静注療法あるいはカテーテルによる脳血栓回収療法の適応があれば、速やかにおこないます。それと同時に、抗血小板薬や抗凝固薬、脳保護薬、抗脳浮腫薬などにより急性期増悪を予防するようにしています。一般的に脳梗塞を生じる方は、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心疾患などの基礎疾患を有しておられる場合が多く、それら基礎疾患に対する治療もおこなうように心がけています。またできるだけ早期にリハビリテーションも開始し、肺炎など合併症予防に努めています。
再開通治療は、「時間との闘い」が重要なため、患者さんやご家族にはあわただしい思いをさせてしまう場合があります。脳梗塞の治療は、良好な予後が期待できる一方で、出血性の合併症や脳梗塞の増悪(悪化)などのリスクを伴います。そのため、私たちが説明します治療計画・内容について十分なご理解をいただいた上で、ご同意をお願いしたいと考えています。
出血の大きさや、部位によって治療法が異なります。出血が小さい場合は、血圧を下げ、出血の拡大を防止する治療を行います。中等度の出血の場合であれば血腫が液状化する時期を待って、局所麻酔下で血腫を吸引除去する手術を行うことがあります。この際必要に応じて内視鏡を使用する場合もあります。一方、血腫が大きく、生命に危険が迫っている場合は、内視鏡を用いた内視鏡下血腫除去術や開頭血腫除去術を実施する場合があります。脳出血では、発症時点で血腫によりすでに脳組織は大なり小なりダメージを受けており、治療を行い順調に回復したとしても何らかの症状が残ることが多いです。このため、脳出血予防が非常に重要です。家庭内での血圧測定を習慣化し、高血圧症を防ぐことが予防の鍵となります。
くも膜下出血では、まずは厳重な血圧管理をおこないながら脳血管撮影または3次元CT血管撮影をおこない、出血源の脳動脈瘤の部位と形を確認し、再破裂を防ぐために開頭手術である脳動脈瘤クリッピング手術やカテーテル手術である脳動脈瘤内コイル塞栓術をおこないます。どの治療が適切かは動脈瘤の場所と大きさ、患者さんの状態に基づいて判断します。
くも膜下出血は、再破裂防止のための手術の後も脳血管攣縮(血管が収縮し脳梗塞を生じる)が起こりやすく、少なくとも発症2週間は厳密な神経学的観察が必要です。脳血管攣縮の程度によっては、さらに治療を追加する必要があります。
このように、ひとたび発症すると、手術治療だけでは治らないこともあるため、当センターとしては、破裂を未然に防ぐ、未破裂脳動脈瘤の治療にも力を入れています。
また、脳出血、くも膜下出血のどちらの場合でも、発症後しばらくしてから、脳室内に髄液が貯まり水頭症となる場合があります。この場合は、貯留した髄液を排出する手術(ドレナージ術やシャント術)が必要です。
超急性期の治療の後に状態が安定すると、救命病棟から一般病棟に移り、日常生活動作の回復のためのリハビリテーションや言語療法、さらに身体的な回復を助けるために、栄養サポートチーム・嚥下チームによる栄養管理や嚥下訓練をおこないます。特に嚥下障害に対しては、リハビリテーション科部長を中心に、嚥下造影検査を取り入れた先進的な取り組みをおこなっています。
また急性期脳卒中センターでは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医療ソーシャルワーカーが参加する、週1回の多職種脳卒中カンファレンスを開催しています。患者さん一人ひとりの治療状況について、さまざまな視点から意見を交換し、より良い治療結果を達成できるよう、日々チーム医療を実践しています。
治療が一段落した後は、連携している他施設の回復期リハビリテーション病棟に転院し、在宅復帰を目指したリハビリテーションを受けていただくことになります。これらの施設の選定や退院、転院後の生活に関する対するご相談は、当院の医療ソーシャルワーカーが対応しています。
京都府内共通の「脳卒中地域連携クリニカルパス」を活用し、リハビリテーション連携病院とは密接な情報共有を行いながら、患者さんのスムーズな治療をサポートしています。
© 2025 Japanese Red Cross Kyoto Daiichi Hospital.