私達が治療の対象とする病気は“膠原病”、“リウマチ性疾患”、そして“自己免疫性疾患”などと複数の名前で呼ばれることが患者さんにとってこの領域の病気に対してわかりにくさを感じさせる原因の一つになっています。まず、これらの名前の由来を解説します。
骨・筋肉・皮膚・血管など全身の臓器に炎症が長く続き、その結果、臓器に一部を取って顕微鏡で観察すると膠原線維(コラーゲン)が多く存在していた。このことから膠原線維の沈着が病気の主な原因と考えられて「膠原病」という名前が使われました。
熱が長く続いたり、全身の関節が腫れて痛みが続く病気が多く含まれますが、古代ギリシャの時代にこれらの現象を「頭に溜まった悪い液体が体のいろいろなところに流れて痛みを引き起こしながら足の方に流れていく」と考えられました。この悪い液体の流れを「ロイマ Rheuma」と呼んだことが始まりで、関節の痛みが続いたり、熱が続く病気をリウマチ性疾患と総称したり、免疫の病気である関節リウマチにも、感染症であるリウマチ熱にも同じ“リウマチ”という言葉が使われるようになった理由です。
医学が進歩し、病気の原因や体の中で起こっていることがより詳しくわかるようになり、感染症からの体を守るべき免疫力が調子が悪くなり自分の体を攻撃してしまっていることがわかってきました。このことから“自己免疫性疾患”という言葉が出てきました。
このように同じ病気であってもその病気のことを表現する際に、どこに注目して表現するかによっていろいろな呼び方がされます。よって診療科の名称も医療機関によって“リウマチ内科”や“膠原病内科”、“免疫内科”など呼び方は違うことがありますが、同じ病気の一群を診療している科と考えていただいて問題はありません。
リウマチ・膠原病疾患の症状としてよく見られるのが関節の痛みや皮膚の赤みや皮疹(ぶつぶつ)などの皮膚症状、そして発熱です。
リウマチ・膠原病疾患でなくても一時的にこれらの症状が出ることはよくあります。しかし、これらの症状が原因不明で長く続く場合、または一度治っても何度も繰り返す場合は、リウマチ・膠原病疾患の症状の一つとして出てきている可能性があります。
かかりつけの先生に紹介状を書いていただき、当科を受診していただけたらと思います。
仮にリウマチ・膠原病疾患でなかったとしても、われわれは普段からこれらの病気に似た症状を起こす病気を多く診療していますので、多くの診療科をそろえる当院の強みを活かして病気の正体を突き止める手助けをさせていただけると考えています。
リウマチ・膠原病疾患の診断は、血液・尿検査だけで診断できるものではなく、逆に診察だけで診断できることも多くはないです。
お話を注意深くお聞きし、全身の診察を行い、血液・尿検査に加えて、レントゲンや超音波検査、場合によってはCT、MRIを受けていただき初めて診断が出来る病気も多くあり、診断が付くまでに何度も検査を受けていただくこともあるかもしれません。
また、過去に受けておられる検査結果やこれまでに判明している病気の内容や飲んでおられる薬の内容が重要な情報となり診断につながることもあります。よって、当科を受診される際はお薬手帳や過去の検査結果などをお持ちいただけると助かります。
リウマチ・膠原病疾患は、自分の免疫反応が原因で起こっている病気です。調子がおかしくなったり、強すぎる免疫反応を薬で調整したり弱めたりして体の調子を整えていく治療を行いますが、基本的に自分の免疫反応をゼロにすることはできません。よって、リウマチ・膠原病疾患を完全に治して治療をやめてしまうことは難しい場合が多く、治療をやめられる場合でも、それまで長い時間がかかることが多いです。
関節リウマチに対して、従来型の抗リウマチ薬(csDMARDs)や生物学的製剤(bDMARDs)、分子標的抗リウマチ薬(tsDMARDs)を患者さんの病状、希望に合わせて適正に使用しています。また、リウマチ・膠原病疾患の治療において感染症や薬剤の副作用など、治療開始後の管理が非常に重要です。
治療の過程で、病気をより良い状態にコントロールするとともに、薬をより副作用の少ない内容に調整するために定期的とその際の血液・尿検査、レントゲン検査などが必要となってきます。受診の度に血液検査や尿検査があるのはそのような理由です。
みなさんの日常生活の中で病気の存在が少しでも小さくなるよう私達もできるだけサポートしていきますので、頑張って行きましょう。
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