椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注入して、ヘルニアによる神経の圧迫を弱める方法です。 この椎間板内酵素注入療法にヘルニコアという薬剤を使用します。
椎間板内に薬剤「商品名:ヘルニコア」を注入すると有効成分のコンドリアーゼが椎間板内髄核の保水成分を分解し椎間板内圧を減少させます。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減すると考えられています。
*参考治療費用 レーザー治療(PLDD) 自費診療でおおよそ40〜50万円
手術のおおまかな流れは下記の通りです。局所麻酔で行います。
上記は一般的な予定であり、個人差があります。
投与によるアナフィラキシーの発現(かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、吐き気などの消化器症状、視野が狭くなるなどの視覚症状)の可能性があります。アレルギー体質の方はヘルニコアの治療に注意が必要です。
過去に椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)を受けたことのある方は、再度この治療法を受けることができません。
ヘルニアの形や出ている位置によっては、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)の適応とならないこともございます。
腰椎不安定症のある患者さん、またその疑いのある患者さんには椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)を行うことができません。
京都第一赤十字病院では経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(FED/PED/PELD)が受けられます。
従来行われてきた一般的な腰椎間板ヘルニア摘出術は、腰部を2~6cm程度切開するため、リハビリなどを含めても7~14日の入院を要しました。しかし当院で行っている経皮的椎間板摘出術(PED)は約8mmと非常に小さな切開で手術が行えるため、短期間の入院で治療ができる手術法です。治療には、高周波メスや、専用の内視鏡を使用し、安心、安全な治療が可能です。PED、PELD、FEDは同義語であり術式に相違はありません。
また、※レーザー椎間板治療(PLDD法:経皮的レーザー椎間板減圧術)に比べて、効果が確高く、健康保険での治療が可能です。
※レーザー椎間板治療(PLDD法:経皮的レーザー椎間板減圧術)は、国内においては、健康保険が適応されない治療法です。また、PLDD治療法はすべての椎間板ヘルニアの患者さんに効果がある治療ではありません。民間治療施設の中には、局所麻酔で、合併症のある方にも安心して、施術が可能であるとしている施設もあるようですが注意が必要です。透析患者さん、椎間板の老化(加齢現象)の認められる患者さん、高齢の患者さん、また脊柱管狭窄症を併発している患者さんにおいては、特に慎重な手術対応が必要です。
当院でFED手術を希望される患者さんは、必ず最寄りのかかりつけ医※の紹介状、当院医療連携室での受診予約をおとりの上、受診してください。上記手術は、高度な専門的技術を必要とする手術方法です。本手術の適応条件に合致した患者さんであるかどうか、あるいは手術が本当に必要な状態であるかどうかを診察および検査を行った上で、厳密に決定しています。腰椎椎間板ヘルニアの手術は、そのほとんどが相対的手術適応(手術が絶対必要な状況ではなく、患者さんの状況に応じて、手術するかどうかを慎重に吟味すべき状況)です。手術の決定までには、一定期間、当院への通院を要することもあります。また、手術後、退院されました後も、当院への通院が可能な方にのみ、当院での施術を行っています。以上を御理解の上、受診されますようお願い申し上げます。
脳からの重要な指令を伝達する脊髄神経が頚の骨の中を走っています。この神経組織が、何らかの原因で強く圧迫されたり、頚の骨の不安定性が続いたりすると神経の障害が発生します。手がしびれて、お箸を使う、字を書く、ボタンを掛けることなどが困難になったり、足がつっぱって歩きにくくなったり、尿の回数が多くなったり、すぐに出にくくなったりなどの症状が発生します。
まず患者さんのお話から、いつ・どの部分に痛みやしびれが生ずるかを聞いて、反射・知覚の異常・筋力の低下を診察します。レントゲン撮影、MRI撮影(磁気共鳴画像)、電気生理学的検査にて診断を確定します。
いったん脊髄が痛んでしまうと、手術をしても回復は期待出来ません。症状の進行性、日常生活動作に与える影響、障害度を検討した上で、手術療法を検討します。当院では手術用顕微鏡視下に後方除圧する低侵襲頚椎椎弓形成術を症例に応じて行っています。これは、術後頚椎の弯曲異常や疼痛が少ない低侵襲手術で早期離床が可能であり、手術翌日から頚椎用装具を装着することなく歩行が可能となっています。
上記のような症状が見受けられた場合、早めの診断をお勧めします。手術待機期間の長い患者さんはセカンドオピニオンをお勧めします。既に手術を勧められている方や、手術の説明を受けたにも関わらず2ヵ月以上の手術待ちの方もご相談ください。脊髄障害は進行性であり、手術待機期間が長期になればなるほど、術後の改善率は低下します。逆に長期の経過観察において、症状が進行しない方は、手術の適応についてセカンドオピニオンを受ける事をお勧めします。そのようなケースでは首のMR検査の画像所見だけで安易に手術適応が決められているケースが多々見受けられます。
手術の翌日から歩いていただけます。頚椎固定装具などの装着は有りません。
低侵襲頚椎椎弓形成術は、約1.5時間という短時間で行え、出血量も少なく、身体への負担が非常に少ない手術です。
皮膚切開範囲が5cm程度※と少ないため手術の痕が目立ちにくく、身体が自然治癒のために形成する瘢痕(ケロイド)による痛みも軽減されます。
また、一般的な手術の場合、予後は少し大げさな装具を装着し、頚椎等の固定を行うものですが、当治療法では装具装着の必要性は無く日常生活に復帰可能です。
※最近の一般的な頚椎手術では通常、第3頚椎から第7頚椎上縁までの範囲で頚椎後方除圧手術が行われます。同範囲で手術が行われた場合の皮膚切開の長さはおおよそ8cm程度(当院では5cm)です。ネット上では低侵襲手術をアピールする医療情報があふれており、通常の手術より皮膚を切る長さが短いことを売り文句にしている施設が多いですが、その手術の比較対照となる一般的手術の皮膚切開の長さを15~20cmと説明するなど誇大広告状態が目立っています。私たちは、正しい適切な医療情報を皆さまにお伝えしたいと考えています。
手術の翌日から歩いていただけます。頚椎固定装具などの装着は有りません。
当院での頚椎後方手術の手術前後の通常の流れです。個々に状況に差異が生じますので前後する場合がございます。
担当の医師が各々に判断し、許可を出しますので担当医の指示に従って下さい。
特に麻痺が進行した症例では、術後リハビリの期間を要する場合が有ります。
腰が痛くて歩きにくい、歩くと足が痛くなったり、しびれたり、突っ張ってきたりする。
脊椎疾患でも、もっとも多い疾患であり、手術や治療の方法も多岐にわたります。
人生をよりよく生きたいと思うのか、現状に妥協し、障害、症状を受け入れ、人生の最後の時を静かに待つのか。そこには、人生の選択があります。わたしたちは、患者さんの意欲、生き抜く気持ちを大切にし、ともに戦うべく、日々修練に励んでいます。
脊柱管内には脳から連続した脊髄神経が走行しており、脳からの重要な指令を伝達しています。腰部脊柱管狭窄症ではその脊柱管が細くなり、神経が圧迫され機能障害が起こります。狭窄の原因の一つはクッションの役割をはたしている椎間板の老化現象で、椎間板は脊柱管に向かい膨隆します。そして椎間板(クッション)ががたつくことにより椎間関節が変形肥厚したり、骨のトゲを作ったりします。さらに脊柱管内の靭帯が厚くなることで神経が圧迫を受けます。圧迫を受けた神経は十分な血流がえられず機能が果たせなくなります。
症状は腰痛(重だるくうずくような痛み)座骨神経痛、間歇跛行、下肢しびれ、歩行障害、排尿障害などがあります。間歇跛行とは歩行により下肢にしびれや突っ張り、神経痛などが生じ、継続して歩行を続けることが困難になっても、座ったりしゃがんだりして休憩すると症状が改善し、再び歩行が可能となる状態をいいます。ほっておくと次第に歩行障害が進展する人もいます。肛門周囲に痺れのある人は、ひどくなると排尿障害をきたします。
当院では年間260件を超える脊椎手術が行われますが、本症が約40~50%を占めています。
まず患者さんのお話から、いつ・どんなときに・どんな格好で・どの部分に痛みやしびれが生ずるかを聞いて、反射・知覚の異常・筋力の低下を診察すれば、ほとんどの方が診断可能です。レントゲン撮影、MRI撮影(磁気共鳴画像)、電気生理学的検査や下肢血流検査を行えば、診断が確定され、治療方針も決定されます。
治療は薬物療法(消炎鎮痛剤・血流改善剤・筋弛緩薬・ビタミンB12など)、点滴、コルセット、神経ブロック療法・日常生活指導などの保存療法を先ず行い、経過を観察します。保存療法に抵抗性で、日常生活動作、趣味などに支障を来すようになった場合、排尿障害のある場合には手術療法が選択されます。
外視鏡視下に、神経を圧迫している骨や靭帯を部分的に削り取ります。当院では低侵襲除圧術(術中動画参照)を行っており、従来法に比較して患者さんに負担が少なくなっております。術後は原則的に簡単なコルセットをつけて手術後翌日から歩き、10~14日で退院が可能です(当院クリニカルパス参照)。ただし腰痛が主体の症状の有る方や、脊椎に不安定な要素が強い方は、骨を移植した固定術が必要で、金属による固定を併用することもあります。術後はコルセットを3ヶ月使用します。
京都第一赤十字病院 整形外科 部長・副院長 大澤 透
整形外科で主に脊椎脊髄病を専門に診療にあたっております大澤です。
今年のはじめ、あの超多忙なことで知られる某テレビ番組の司会者MM氏が腰部脊柱管狭窄症という疾患で手術を受けられたことは記憶に新しいことと思います。手術後短期間で番組に復帰され、周囲の人たちのみならず、日本国民の多くが驚いたものでした。このことでもおわかりいただけるように、脊椎外科における最近の手術手技の進歩はめざましいものがあります。ズバリ!内視鏡技術や顕微鏡手術の導入による患者さんにやさしい低侵襲手術が、最近の治療の基本戦略です。当院におきましても、積極的に本技術の導入に努めています。
さて、このMM氏が患った腰部脊柱管狭窄症は、高齢化社会を迎えた現在、とみに患者数の増加が著しい疾患であり、当院にも数多くの患者さんが受診されています。歩いたり立ったりしているだけで腰から下肢にかけて神経痛やしびれがでて患者さんを悩ませる病気です。内服加療や物理療法などでは効果の十分でない方が手術適応となります。中には80歳を超える方々もおられます。
そのうちのお一人、Sさんの例をご紹介いたしましょう。Sさんは御年83歳であります。1年あまり外来通院され保存的治療に限界が見え始めた頃、とうとう手術を決断されました。いつも奥様を連れて来院される、とても仲のよさそうなおしどり夫婦です。術前には「足腰が痛くなって家内について歩くことができない、買い物に一緒にいけない」と悩んでおられたのですが、術後3日目には院内を歩いておられ、その段階で症状が改善していると実感されていました。術後2週間の退院時には「これからの人生を楽しみますよ」と笑顔でおっしゃられました。人生を楽しむ、生きることの喜びを再び取り戻すことができたという気持ちが患者さんから伝わってきました。多くの高齢者が、手術に消極的になられることが多いなか、積極的に人生を生きようとしているSさんの姿に感銘を受けました。本疾患は直接命に関わることがなく、安静にさえしていれば症状がおさえられるため、患者さんは家に閉じこもりがちになっていきます。そんなとき、少しのお手伝いをさせていただければ、社会復帰し、人生を取り戻すことができるのです。
手術は外視鏡視下低侵襲手術を取り入れており、腰背筋を傷めることなく術野を展開し(MILD法: Muscle preserving interlaminar decompression, 八田ら, Medical Postgraduates 2004;42:88-94)、安全かつ体にやさしいものです。入院期間は12日間です(当院クリニカルパス参照)。症状にお悩みの方、人生の再出発を考えている方がおられましたら、まずはご相談ください。正確な知識を提供することから、治療ははじまると信じています。
京都第一赤十字病院広報誌絆から引用
中が曲がると歩くだけで腰が痛い
背骨がつながっている状態を柱に見立てて脊柱と呼んでいます。生理的な脊柱の配列は、背中では後ろに凸、腰では前に凸の弯曲があり、前から見るとまっすぐな状態です。背骨が後ろに曲がり過ぎた状態(ねこぜがひどくなった状態)を脊柱後弯症と呼んでいます。原因は、椎間板が老化して体を支えられなくなったことのほか、背骨の圧迫骨折や背筋力の低下です。
通常は、軽度の背中の曲がりの状態では、体の各部分が代償することにより、症状はあまり強く自覚されませんが変形が進行しますと下記の典型的な症状が現れます。
治療後の患者さんの感想から
椎骨と脊髄の間にあり頸椎を補強している靭帯組織のうち後縦靱帯が骨化して厚くなり、脊髄を圧迫する病気です。首の痛みだけでなく、進行すると手足のしびれなども現れてきます。骨化した靭帯は、脊柱管(せきちゅうかん)内で脊髄を徐々に圧迫し、麻痺症状を引き起こします。
主な症状は脊髄圧迫症状で、手足のしびれや痛み、手の細かい動作がやりにくいなどの症状が現れます。また、足が突っ張って歩きにくい、さらに頻尿や失禁、便秘などが現れることもあります。こういった脊髄症状は、徐々に悪化する場合がほとんどですが、転倒などの軽い外傷などがきっかけとなって、急激に悪化することもあります。
手術適応のある患者さんには、頚椎症性脊髄症に対する低侵襲頚椎椎弓形成術を行います。
腰椎すべり症は推骨が前方にずれた状態で、腰椎分離すべり症と腰椎変性すべり症があります。腰椎の椎間板のついている前方部分は椎体(ついたい)、後方の椎間関節のついている部分は椎弓(ついきゅう)と呼ばれます。椎体と椎弓の間には椎弓根(ついきゅうこん)があります。椎弓の部分で骨の連続性が断たれてしまい、椎体と椎弓が離れてしまった状態を「腰椎分離症」といいます。分離症のなかで、後方部分の支持性がないため椎体が前方にずれてくるものを「分離すべり症」と呼びます。すべり症は脊椎同士がずれた状態を指しますが、椎間板の老化による不安定性が原因でずれたものを「変性すべり症」と呼びます。
すべり症は、腰痛が主な症状ですが,坐骨神経痛や間欠性跛行の症状が現われることがあります。腰部や殿部が重苦しい・だるいような痛みで,痛みは激しい運動や作業後に現われますが、安静にしていると軽減することが多いようです。
手術が必要な症例では、症例に応じて低侵襲腰椎後方除圧術、低侵襲脊椎前方後方固定や低侵襲脊椎後方固定を行います。当院では可能な限り、固定術を選択しない術式を選択するように心がけています。
脊椎での圧迫骨折は、椎骨の椎体と呼ばれる部分が押しつぶされます。骨折する場所で多いのは、第11胸椎から第2腰椎です。圧迫骨折の原因でもっとも多いのが、高齢者の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。骨粗鬆症が進むと、しりもちをついた程度で骨折することがあります。特に高齢の女性は注意が必要です。若年者でも事故や腫瘍などが原因で胸椎圧迫骨折が起こることがありますが、それほど多くはありません。
骨粗鬆症が原因となる胸椎圧迫骨折の症状は、痛みが背部や腰部に発生します。骨折した椎体の破片が脊柱管内に入り込み神経を圧迫すると、下肢のしびれや痛み、麻痺などの症状が現れます。圧迫骨折は予防が重要です。若いうちから骨粗鬆症にならないための食事と運動、年をとったら転倒などしないような注意が必要です。
椎体圧迫骨折の治療では安静臥床および体幹装具(コルセット)による保存的治療をまず行なっています。疼痛が強く長期間の臥床安静を要する危険性の高い状態の時には、経皮的椎体形成術(椎体内骨セメント注入術・B K P、V B S)を行なっています。圧迫骨折後に椎体の変形が残存し腰曲がり腰痛をきたした場合には、脊柱後弯変形矯正固定術を行なっています。
成長期の子供さんは側弯変形が進行しやすいのです。
学校側弯検診で要診察とされたら、民間療法へ向かう前に、整形外科(脊椎、側弯症外来)の受診をおすすめします。当院では側湾症学会に所属する専門医師が側弯症外来を行っています。
側弯のカーブが進行していないケースでは、変形の度合いに応じて装具療法を使い分けています。カーブが浅い状態では、夜間装具を用いて、患者さんに負担の少ない治療を心がけています。
残念ながら側弯カーブが進行し手術が必要となったケースでは、より安全な技術*を用いて矯正手術を行うことを心がけています。
*安全に手術を行う技術について
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