骨・関節の病気について

  • 上肢
    • 鎖骨骨折、上腕骨外科頚骨折、肩関節脱臼骨折、上腕骨骨幹部骨折、上腕骨遠位端骨折、肘関節脱臼骨折、橈尺骨近位端骨折、橈尺骨骨幹部骨折、橈尺骨遠位端骨折、舟状骨骨折、舟状骨周囲脱臼骨折、変形性母指CM関節症、手根管症候群、ばね指、手部骨折
  • 下肢
    • 骨盤輪骨折、寛骨臼骨折、大腿骨近位部骨折、変形性股関節症、股関節臼蓋形成不全、大腿骨頭壊死症、大腿骨転子下骨折、大腿骨骨幹部骨折、大腿骨遠位端骨折、変形性膝関節症、化膿性膝関節炎、半月板損傷、前十字靭帯損傷、膝蓋骨脱臼、脛骨高原骨折、脛骨近位端骨折、脛腓骨骨幹部骨折、脛腓骨遠位端骨折、足関節脱臼骨折、距骨骨折、踵骨骨折、リスフラン関節脱臼骨折、足部骨折
  • その他
    • 多発外傷、各種開放骨折、小児骨折、骨軟部腫瘍、転移性骨腫瘍、骨髄炎、難治骨折、偽関節、小児化膿性股関節炎など

検査・治療の詳しい説明

変形性股関節症

  1. 症状
    • 軽い時には動きはじめに股関節の痛みを感じる方が多いです。 徐々に歩行時の痛みが強くなります。 動く範囲も狭くなり、開脚もできなくなる方もいます。 しゃがみこむ動作はできなくなり、日常生活に支障をきたすようになります。
  2. 検査
    • 単純X線やCTを撮影します。 骨頭壊死との鑑別にはMRIを行います。
  3. 治療
    • 保存的治療は難しく、鎮痛剤や杖の使用および減量が中心となります。 手術治療としては人工股関節全置換術(THA)を行うことが多いです。当院では手術支援ロボットを用いて低侵襲に行うようにしており、入院期間は17日間で計画いたします。 退院後の生活に不安を感じている場合は、術後に転院してリハビリテーション治療を強化することも可能です。

変形性膝関節症

  1. 症状
    • 軽い時には動きはじめに膝関節の痛みを感じる方が多いです。 徐々に歩行時の痛みが強くなります。 外観上もO脚やX脚になり、深く曲げることも困難になるため、しゃがみこむ動作はできなくなります。
  2. 検査
    • 単純X線やCTを撮影します。 骨壊死や靱帯、半月板の状態を調べるためにMRIを行うこともあります。
  3. 治療
    • 鎮痛剤、外用剤、関節内注射および装具を用いた保存的治療が可能です。 疼痛が強ければ杖の使用や減量を指示いたします。 手術治療としては傷んでいる範囲や下肢の形状によって異なりますが、膝周囲骨切り術(AKO)(高位脛骨骨切り術(HTO)など)や人工膝関節単顆置換術(UKA)、人工膝関節全置換術(TKA)を行います。 当院のTKAは手術支援ロボットを用いて正確なインプラント設置を行うようにしており、入院期間は3週間弱で計画いたします。 退院後の生活に不安を感じている場合は、転院してリハビリテーション治療を強化することも可能です。

大腿骨近位部骨折

  1. 症状
    • 大腿骨近位部骨折は大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折に大別されます。 これらの骨折は転倒したり下肢をひねったりといった軽微な外傷で生じます。 受傷直後に痛みで動けなくなる場合や、はじめは痛みが軽かったのが、数日後に痛みが強くなる場合もあります。 こけたりひねったりした後に股関節に疼痛を感じたら、歩けていても骨折していることがありますので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
  2. 検査
    • 単純X線やCTを撮影します。 X線とCTで骨折が判然としない場合はMRIを行うこともあります。
  3. 治療
    • 大腿骨転子部骨折は手術治療をお勧めします。 早期の手術と早期のリハビリテーション治療を行うことで予後が良くなると言われていることから、来院後早期の手術を心がけており、2023年度は来院後平均1.2日で手術を施行できております。 また、大腿骨頚部骨折も手術をお勧めすることが多いです。 骨折の程度によって骨を接合する手術か、人工骨頭へ置換する手術を選択します。
    • 大腿骨近位部骨折の術後は若年者を除いて術翌日から全体重をかけた起立・歩行訓練を行うように心がけております。 全身状態が落ち着けば転院してリハビリテーション治療を強化いただきます。 また、一方の大腿骨を骨折したら、反対側も骨折する危険性が2倍以上と報告されており、二次骨折予防に骨粗鬆症治療を開始するようにしております。

脊椎の病気について

当院で脊椎脊髄専門外来にて専門的に対応可能な病気

  1. 腰椎疾患
    • 腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎変性すべり症、腰椎分離症、腰椎分離すべり症、腰椎椎間孔狭窄、腰椎固定術後隣接椎間障害、再発性腰椎椎間板ヘルニア、腰椎固定術後腰痛(医原性術後腰痛、flat back syndrome)
  2. 頚椎疾患
    • 頚椎症性脊髄症、頚椎後縦靭帯骨化症、頚椎変性すべり症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、首下がり、頚部脊柱管狭窄症、頚椎硬膜内髄外腫瘍、頚椎砂時計種、環軸椎亜脱臼
  3. 胸椎疾患
    • 胸髄症、胸椎黄色靭帯骨化症、胸椎後縦靭帯骨化症
  4. 脊柱変形疾患
    • 特発性脊柱側彎症、成人脊柱変形(脊柱後弯症、脊柱後側弯症)
  5. 脊椎外傷
    • 破裂骨折、圧迫骨折、脱臼骨折、歯突起骨折
  6. 感染性脊椎炎
    • 化膿性脊椎炎
  7. その他
    • 骨粗鬆症性脊椎骨折、透析脊椎症、破壊性脊椎骨関節症、転移性脊椎腫瘍、脊髄腫瘍(硬膜内髄外腫瘍:髄膜種、神経鞘腫)、リウマチ脊椎症

検査・治療の詳しい説明

腰椎椎間板ヘルニア 椎間板内酵素注入療法について

椎間板内に酵素を含んだ薬剤を直接注入して、ヘルニアによる神経の圧迫を弱める方法です。 この椎間板内酵素注入療法にヘルニコアという薬剤を使用します。

1. ヘルニコアについて

椎間板内に薬剤「商品名:ヘルニコア」を注入すると有効成分のコンドリアーゼが椎間板内髄核の保水成分を分解し椎間板内圧を減少させます。結果として神経への圧迫が改善し、痛みや痺れなどの症状が軽減すると考えられています。

2. 本治療の利点
  • 局所麻酔での治療が可能
  • 傷跡が残らない注射による治療
  • レーザー治療(PLDD)のような熱による凝固蒸散で椎間板組織を急激に破壊しない
  • 健康保険を使用しての治療でありレーザー治療より治療費がかからない*
  • 治療の適応・効果はレーザー治療とほぼ同様

*参考治療費用 レーザー治療(PLDD) 自費診療でおおよそ40〜50万円

3. ヘルニコア治療の流れ

手術のおおまかな流れは下記の通りです。局所麻酔で行います。

  1. 午前中に入院します。
  2. 病室にて点滴の準備をします。
  3. 午後に治療室へ出室します。
  4. 治療台に横になります。
  5. 針をさす場所を決定します。
  6. 消毒・局所麻酔を行います。
  7. 椎間板内に針を刺しヘルニコアを注入します。
  8. 検査室で30分間、お体の状態を確認します。
  9. 病室へ帰室します。
  10. 病室で3時間安静になり問題なければ翌日午前中に退院可能です。

上記は一般的な予定であり、個人差があります。

4. 椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)の注意点

投与によるアナフィラキシーの発現(かゆみ、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、吐き気などの消化器症状、視野が狭くなるなどの視覚症状)の可能性があります。アレルギー体質の方はヘルニコアの治療に注意が必要です。
過去に椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)を受けたことのある方は、再度この治療法を受けることができません。
ヘルニアの形や出ている位置によっては、椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)の適応とならないこともございます。
腰椎不安定症のある患者さん、またその疑いのある患者さんには椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア注入)を行うことができません。

腰椎椎間板ヘルニア内視鏡手術について( FED / PED / PELD )

京都第一赤十字病院では経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(FED/PED/PELD)が受けられます。

1.経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(FED/PED/PELD)とは

従来行われてきた一般的な腰椎間板ヘルニア摘出術は、腰部を2~6cm程度切開するため、リハビリなどを含めても7~14日の入院を要しました。しかし当院で行っている経皮的椎間板摘出術(PED)は約8mmと非常に小さな切開で手術が行えるため、短期間の入院で治療ができる手術法です。治療には、高周波メスや、専用の内視鏡を使用し、安心、安全な治療が可能です。PED、PELD、FEDは同義語であり術式に相違はありません。
また、※レーザー椎間板治療(PLDD法:経皮的レーザー椎間板減圧術)に比べて、効果が確高く、健康保険での治療が可能です。
※レーザー椎間板治療(PLDD法:経皮的レーザー椎間板減圧術)は、国内においては、健康保険が適応されない治療法です。また、PLDD治療法はすべての椎間板ヘルニアの患者さんに効果がある治療ではありません。民間治療施設の中には、局所麻酔で、合併症のある方にも安心して、施術が可能であるとしている施設もあるようですが注意が必要です。透析患者さん、椎間板の老化(加齢現象)の認められる患者さん、高齢の患者さん、また脊柱管狭窄症を併発している患者さんにおいては、特に慎重な手術対応が必要です。

2.術後後療法・リハビリテーション
  • 手術当日:手術5時間後より歩行可能
  • 腰椎軟性コルセット:3ヵ月装着を原則としています。
  • 手術翌日〜術後3日で退院が可能です。
  • 重労働、スポーツ復帰:術後12週から
3.退院後の通院
  • 手術後1週、3週、3ヶ月、6ヶ月、1年の時点で再来していただきます。レントゲン、MRIなどを適宜撮影させていただきます。
<術後気をつけるべきこと、術後の過ごし方について>
  • 手術後1週、3週、3ヶ月、6ヶ月、1年の時点で再来していただきます。レントゲン、MRIなどを適宜撮影させていただきます。
  • 手術はあくまでもヘルニアを切除するに過ぎません。腰椎を安定させ、再発防止に心がけてください。
  • 術後の無理は禁物です
  • 退院後から1週間 食事時間や1時間以内の勤務時間であれば立ったり、座ったり、正しい姿勢なら步いてもかまいません。低い姿勢をとる時は、腰を曲げずに、膝を使ってかがむようにします。体をねじる動作は控えてください。腰の運動をする時は立ったり座ったりしたままで行わないようにします。 手術創を消毒する必要はなく、絆創膏は7日後に剝がします。歩いたり、立ったり、動く時にはコルセットを着用しますが、家で橫になって寝る時は着用しなくてもかまいません。
  • 術後2週から3週 学校や職場にも行けますが、1時間ごとに必ず立って腰を伸ばし、まっすぐに立って步いてから、また座るようにします。1週目と同樣、腰をねじったり、かがむ姿勢はとってはいけません。入浴は可能です。 1時間以内であれはば自分で車を運転してもかまいません。
  • 術後3週から3ヵ月 きつすぎない労働、事務や家事、勉強などは正常に行えます。コルセットは術後3ヵ月間ほど着用します。
  • 術後3ヵ月以降 重労働も可能です。術後の椎間板の状態を確認するため、レントゲン撮影検査、MRI検査を行います。
  • 施術後6ヶ月にも受診していただき、腰の診察を行います。
  • その他の 注意事項 喫煙は腰に悪影響があります。椎間板の老化現象をこれ以上進行させないためにも、本治療を機会に、禁煙にトライしてみましょう。 糖尿病、高血圧や、心臟疾患などの内科疾患で薬を服用している場合は、内科医師の指示のもとに薬を続けて服用してもかまいません。
<当院でFED (PED) 手術を希望される患者さんへ>

当院でFED手術を希望される患者さんは、必ず最寄りのかかりつけ医※の紹介状、当院医療連携室での受診予約をおとりの上、受診してください。上記手術は、高度な専門的技術を必要とする手術方法です。本手術の適応条件に合致した患者さんであるかどうか、あるいは手術が本当に必要な状態であるかどうかを診察および検査を行った上で、厳密に決定しています。腰椎椎間板ヘルニアの手術は、そのほとんどが相対的手術適応(手術が絶対必要な状況ではなく、患者さんの状況に応じて、手術するかどうかを慎重に吟味すべき状況)です。手術の決定までには、一定期間、当院への通院を要することもあります。また、手術後、退院されました後も、当院への通院が可能な方にのみ、当院での施術を行っています。以上を御理解の上、受診されますようお願い申し上げます。

頚椎症生脊髄症

1. 病気の原因は?

脳からの重要な指令を伝達する脊髄神経が頚の骨の中を走っています。この神経組織が、何らかの原因で強く圧迫されたり、頚の骨の不安定性が続いたりすると神経の障害が発生します。手がしびれて、お箸を使う、字を書く、ボタンを掛けることなどが困難になったり、足がつっぱって歩きにくくなったり、尿の回数が多くなったり、すぐに出にくくなったりなどの症状が発生します。

2. 脊髄障害を疑う症状
  • 上肢の運動/感覚障害
  • 手指の動きがぎこちなくなった
  • 字が書きにくくなった
  • お箸が持ちにくくなった
  • ボタンが掛けにくくなった
  • ひもがうまく結べなくなった
  • 洗濯物を干しにくくなった
  • 下肢の運動/感覚障害
  • つまずきやすくなった
  • 平地でも、歩くのに杖が必要になった
  • 階段の上がり下りで手すりが必要になった
  • 早歩きができない
  • 排尿機能の障害
  • 頻尿、尿漏れ、失禁
  • 排尿遅延
  • 残尿感
3. 検査や診断法は?

まず患者さんのお話から、いつ・どの部分に痛みやしびれが生ずるかを聞いて、反射・知覚の異常・筋力の低下を診察します。レントゲン撮影、MRI撮影(磁気共鳴画像)、電気生理学的検査にて診断を確定します。

4. 治療方法は?

いったん脊髄が痛んでしまうと、手術をしても回復は期待出来ません。症状の進行性、日常生活動作に与える影響、障害度を検討した上で、手術療法を検討します。当院では手術用顕微鏡視下に後方除圧する低侵襲頚椎椎弓形成術を症例に応じて行っています。これは、術後頚椎の弯曲異常や疼痛が少ない低侵襲手術で早期離床が可能であり、手術翌日から頚椎用装具を装着することなく歩行が可能となっています。
上記のような症状が見受けられた場合、早めの診断をお勧めします。手術待機期間の長い患者さんはセカンドオピニオンをお勧めします。既に手術を勧められている方や、手術の説明を受けたにも関わらず2ヵ月以上の手術待ちの方もご相談ください。脊髄障害は進行性であり、手術待機期間が長期になればなるほど、術後の改善率は低下します。逆に長期の経過観察において、症状が進行しない方は、手術の適応についてセカンドオピニオンを受ける事をお勧めします。そのようなケースでは首のMR検査の画像所見だけで安易に手術適応が決められているケースが多々見受けられます。

5. 低侵襲頚椎椎弓形成術の特徴

手術の翌日から歩いていただけます。頚椎固定装具などの装着は有りません。

  • 皮切範囲 … 5cm程度 ※皮膚を縫わないため傷がキレイに治ります。
  • 手術時間… 約1.5時間
  • 出血量 … 少量〜約50ml
  • 歩行可能になるまでの期間 … 約1日(手術翌日)

低侵襲頚椎椎弓形成術は、約1.5時間という短時間で行え、出血量も少なく、身体への負担が非常に少ない手術です。
皮膚切開範囲が5cm程度※と少ないため手術の痕が目立ちにくく、身体が自然治癒のために形成する瘢痕(ケロイド)による痛みも軽減されます。
また、一般的な手術の場合、予後は少し大げさな装具を装着し、頚椎等の固定を行うものですが、当治療法では装具装着の必要性は無く日常生活に復帰可能です。
※最近の一般的な頚椎手術では通常、第3頚椎から第7頚椎上縁までの範囲で頚椎後方除圧手術が行われます。同範囲で手術が行われた場合の皮膚切開の長さはおおよそ8cm程度(当院では5cm)です。ネット上では低侵襲手術をアピールする医療情報があふれており、通常の手術より皮膚を切る長さが短いことを売り文句にしている施設が多いですが、その手術の比較対照となる一般的手術の皮膚切開の長さを15~20cmと説明するなど誇大広告状態が目立っています。私たちは、正しい適切な医療情報を皆さまにお伝えしたいと考えています。

6. 低侵襲椎弓形成術の術前・術後の流れ

手術の翌日から歩いていただけます。頚椎固定装具などの装着は有りません。

(手術当日からの流れ)

当院での頚椎後方手術の手術前後の通常の流れです。個々に状況に差異が生じますので前後する場合がございます。
担当の医師が各々に判断し、許可を出しますので担当医の指示に従って下さい。
特に麻痺が進行した症例では、術後リハビリの期間を要する場合が有ります。

(手術前日)
  • 入院していただき病室で術前後のオリエンテーションを担当看護師より受けます。
  • 術前麻酔科回診が有ります。
  • 術前手術場看護師の訪問があります。
  • 術前理学療法士(リハビリ療法師)の回診が有ります。術前の身体所見を確認し、術後リハビリの進め方を確認し患者さんに説明します。上肢機能、手指機能障害が進行した患者さんには作業療法の指示が追加されます。
(手術当日/手術前)
  • 絶食をお願いします。手術開始2時間前までは当院指定の低張液(OS1)の飲水が可能です。
  • 歩いて手術室へ。(麻痺の進行した患者さんは車椅子で手術室に向かいます。)
(手術当日/術後)
  • すぐにご家族と会話していただけます。
(手術翌日)
  • 朝、点滴を抜きます。
  • 食事を開始します。
  • トイレ歩行を許可します。
(手術から2日後)
  • 創部に設置した排液チューブを抜きます。
(手術から5日後)
  • 創部のガーゼを除去します。
(手術から7日後)
  • シャワー浴を許可します。
(手術から10~14日後)
  • 階段歩行までリハビリが進んだ事を確認して退院を許可します。
(手術から1ヵ月後)
  • デスクワークなどの軽作業のかたは仕事に復帰可能です。
(手術から3ヵ月後)
  • ゴルフなどのスポーツも可能です。

腰部脊柱管狭窄症

腰が痛くて歩きにくい、歩くと足が痛くなったり、しびれたり、突っ張ってきたりする。
脊椎疾患でも、もっとも多い疾患であり、手術や治療の方法も多岐にわたります。
人生をよりよく生きたいと思うのか、現状に妥協し、障害、症状を受け入れ、人生の最後の時を静かに待つのか。そこには、人生の選択があります。わたしたちは、患者さんの意欲、生き抜く気持ちを大切にし、ともに戦うべく、日々修練に励んでいます。

(病気の原因は?)

脊柱管内には脳から連続した脊髄神経が走行しており、脳からの重要な指令を伝達しています。腰部脊柱管狭窄症ではその脊柱管が細くなり、神経が圧迫され機能障害が起こります。狭窄の原因の一つはクッションの役割をはたしている椎間板の老化現象で、椎間板は脊柱管に向かい膨隆します。そして椎間板(クッション)ががたつくことにより椎間関節が変形肥厚したり、骨のトゲを作ったりします。さらに脊柱管内の靭帯が厚くなることで神経が圧迫を受けます。圧迫を受けた神経は十分な血流がえられず機能が果たせなくなります。

(症状は?)

症状は腰痛(重だるくうずくような痛み)座骨神経痛、間歇跛行、下肢しびれ、歩行障害、排尿障害などがあります。間歇跛行とは歩行により下肢にしびれや突っ張り、神経痛などが生じ、継続して歩行を続けることが困難になっても、座ったりしゃがんだりして休憩すると症状が改善し、再び歩行が可能となる状態をいいます。ほっておくと次第に歩行障害が進展する人もいます。肛門周囲に痺れのある人は、ひどくなると排尿障害をきたします。
当院では年間260件を超える脊椎手術が行われますが、本症が約40~50%を占めています。

(検査や診断法は?)

まず患者さんのお話から、いつ・どんなときに・どんな格好で・どの部分に痛みやしびれが生ずるかを聞いて、反射・知覚の異常・筋力の低下を診察すれば、ほとんどの方が診断可能です。レントゲン撮影、MRI撮影(磁気共鳴画像)、電気生理学的検査や下肢血流検査を行えば、診断が確定され、治療方針も決定されます。

(手術以外の治療法(保存療法)は?)

治療は薬物療法(消炎鎮痛剤・血流改善剤・筋弛緩薬・ビタミンB12など)、点滴、コルセット、神経ブロック療法・日常生活指導などの保存療法を先ず行い、経過を観察します。保存療法に抵抗性で、日常生活動作、趣味などに支障を来すようになった場合、排尿障害のある場合には手術療法が選択されます。

(手術方法は?)

外視鏡視下に、神経を圧迫している骨や靭帯を部分的に削り取ります。当院では低侵襲除圧術(術中動画参照)を行っており、従来法に比較して患者さんに負担が少なくなっております。術後は原則的に簡単なコルセットをつけて手術後翌日から歩き、10~14日で退院が可能です(当院クリニカルパス参照)。ただし腰痛が主体の症状の有る方や、脊椎に不安定な要素が強い方は、骨を移植した固定術が必要で、金属による固定を併用することもあります。術後はコルセットを3ヶ月使用します。

ある患者さんの治療 からだにやさしい腰の治療をめざして

京都第一赤十字病院 整形外科 部長・副院長 大澤 透

整形外科で主に脊椎脊髄病を専門に診療にあたっております大澤です。
今年のはじめ、あの超多忙なことで知られる某テレビ番組の司会者MM氏が腰部脊柱管狭窄症という疾患で手術を受けられたことは記憶に新しいことと思います。手術後短期間で番組に復帰され、周囲の人たちのみならず、日本国民の多くが驚いたものでした。このことでもおわかりいただけるように、脊椎外科における最近の手術手技の進歩はめざましいものがあります。ズバリ!内視鏡技術や顕微鏡手術の導入による患者さんにやさしい低侵襲手術が、最近の治療の基本戦略です。当院におきましても、積極的に本技術の導入に努めています。
さて、このMM氏が患った腰部脊柱管狭窄症は、高齢化社会を迎えた現在、とみに患者数の増加が著しい疾患であり、当院にも数多くの患者さんが受診されています。歩いたり立ったりしているだけで腰から下肢にかけて神経痛やしびれがでて患者さんを悩ませる病気です。内服加療や物理療法などでは効果の十分でない方が手術適応となります。中には80歳を超える方々もおられます。
そのうちのお一人、Sさんの例をご紹介いたしましょう。Sさんは御年83歳であります。1年あまり外来通院され保存的治療に限界が見え始めた頃、とうとう手術を決断されました。いつも奥様を連れて来院される、とても仲のよさそうなおしどり夫婦です。術前には「足腰が痛くなって家内について歩くことができない、買い物に一緒にいけない」と悩んでおられたのですが、術後3日目には院内を歩いておられ、その段階で症状が改善していると実感されていました。術後2週間の退院時には「これからの人生を楽しみますよ」と笑顔でおっしゃられました。人生を楽しむ、生きることの喜びを再び取り戻すことができたという気持ちが患者さんから伝わってきました。多くの高齢者が、手術に消極的になられることが多いなか、積極的に人生を生きようとしているSさんの姿に感銘を受けました。本疾患は直接命に関わることがなく、安静にさえしていれば症状がおさえられるため、患者さんは家に閉じこもりがちになっていきます。そんなとき、少しのお手伝いをさせていただければ、社会復帰し、人生を取り戻すことができるのです。
手術は外視鏡視下低侵襲手術を取り入れており、腰背筋を傷めることなく術野を展開し(MILD法: Muscle preserving interlaminar decompression, 八田ら, Medical Postgraduates 2004;42:88-94)、安全かつ体にやさしいものです。入院期間は12日間です(当院クリニカルパス参照)。症状にお悩みの方、人生の再出発を考えている方がおられましたら、まずはご相談ください。正確な知識を提供することから、治療ははじまると信じています。

京都第一赤十字病院広報誌絆から引用

脊柱変性後側弯症(腰曲がり腰痛)

中が曲がると歩くだけで腰が痛い

(病気の原因は?)

背骨がつながっている状態を柱に見立てて脊柱と呼んでいます。生理的な脊柱の配列は、背中では後ろに凸、腰では前に凸の弯曲があり、前から見るとまっすぐな状態です。背骨が後ろに曲がり過ぎた状態(ねこぜがひどくなった状態)を脊柱後弯症と呼んでいます。原因は、椎間板が老化して体を支えられなくなったことのほか、背骨の圧迫骨折や背筋力の低下です。

(症状は?)

通常は、軽度の背中の曲がりの状態では、体の各部分が代償することにより、症状はあまり強く自覚されませんが変形が進行しますと下記の典型的な症状が現れます。

  • 前方注視障害 背中が曲がっているために前を向くことが困難となる場合があります。
  • 慢性の腰背部痛 背中が曲がることにより、体の重心が前方に偏りますので、体を支えるために常に腰背部の筋肉が緊張している状態となりますので、疲労性の腰背部痛を生じます。本症状は、体を手や肘をついて支えると緩和します。
  • 歩行障害(腰痛性間欠破行) 患者さんは数十メートル程度の歩行で腰背部痛を生じ歩行が困難となりますが、しゃがんだり、座ったりすることで速やかに症状が緩和し、再び歩き出せるようになります。腰部脊柱管狭窄症に見られるような間歇跛行症状を呈します。狭窄症と違って、下肢のしびれや疼痛などの神経症状は生じないのが特長です。
  • 長時間立位困難 長時間の台所作業などが困難となります。長時間の立位作業では肘をつくなどして疲労を和らげる必要があります。
  • 逆流性食道炎 腰が曲がるとお腹が食い込んだようになり常に胃や腸が圧迫された状態になります。消化器内科でお薬の治療を受けても、治らない難治性の食道炎となります。
  • 心肺機能低下 肺の容積が減少し心肺機能が低下していきます。
(治療方法は?)
  • 軽症の場合 運動療法を行います。当院では猫体操、マッケンジー体操、腰痛これだけ体操、ロコモ体操などを取り入れて治療を行っています。
  • 重症の場合 この手術の目的は、脊柱後弯を矯正固定して、より楽な生活を送れるようにすることです。具体的には、後弯の進行を止めること、脊柱変形による背中の痛みを軽くすることです。 チタン合金製のインプラントを使って背骨の配列を正常に近い状態にします。必要に応じて椎間板や背骨の一部を切り取って背骨の配列を治すことも必要になります。金属は、骨がついて体を支えられるようになるまでの期間、体を支える役割を果たします。腰骨の脊柱変形の場合には、椎間板を取って変形を矯正する場合があります。
(治療するといいことがありますか?)

治療後の患者さんの感想から

  • 近所で立ち話が長い時間出来るようになりました。
  • 長時間歩いても腰が痛くなくなりました。
  • 台所仕事が長時間出来るようになりました。
  • 胸焼けなどの症状がなくなりました。
  • 食欲が戻りました。
  • 杖無しで歩けるようになりました。

頚椎後縦靱帯骨化症

椎骨と脊髄の間にあり頸椎を補強している靭帯組織のうち後縦靱帯が骨化して厚くなり、脊髄を圧迫する病気です。首の痛みだけでなく、進行すると手足のしびれなども現れてきます。骨化した靭帯は、脊柱管(せきちゅうかん)内で脊髄を徐々に圧迫し、麻痺症状を引き起こします。
主な症状は脊髄圧迫症状で、手足のしびれや痛み、手の細かい動作がやりにくいなどの症状が現れます。また、足が突っ張って歩きにくい、さらに頻尿や失禁、便秘などが現れることもあります。こういった脊髄症状は、徐々に悪化する場合がほとんどですが、転倒などの軽い外傷などがきっかけとなって、急激に悪化することもあります。
手術適応のある患者さんには、頚椎症性脊髄症に対する低侵襲頚椎椎弓形成術を行います。

腰椎変性すべり症

腰椎すべり症は推骨が前方にずれた状態で、腰椎分離すべり症と腰椎変性すべり症があります。腰椎の椎間板のついている前方部分は椎体(ついたい)、後方の椎間関節のついている部分は椎弓(ついきゅう)と呼ばれます。椎体と椎弓の間には椎弓根(ついきゅうこん)があります。椎弓の部分で骨の連続性が断たれてしまい、椎体と椎弓が離れてしまった状態を「腰椎分離症」といいます。分離症のなかで、後方部分の支持性がないため椎体が前方にずれてくるものを「分離すべり症」と呼びます。すべり症は脊椎同士がずれた状態を指しますが、椎間板の老化による不安定性が原因でずれたものを「変性すべり症」と呼びます。
すべり症は、腰痛が主な症状ですが,坐骨神経痛や間欠性跛行の症状が現われることがあります。腰部や殿部が重苦しい・だるいような痛みで,痛みは激しい運動や作業後に現われますが、安静にしていると軽減することが多いようです。
手術が必要な症例では、症例に応じて低侵襲腰椎後方除圧術、低侵襲脊椎前方後方固定や低侵襲脊椎後方固定を行います。当院では可能な限り、固定術を選択しない術式を選択するように心がけています。

骨粗鬆症性脊椎椎体骨折(脊椎圧迫骨折)

脊椎での圧迫骨折は、椎骨の椎体と呼ばれる部分が押しつぶされます。骨折する場所で多いのは、第11胸椎から第2腰椎です。圧迫骨折の原因でもっとも多いのが、高齢者の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。骨粗鬆症が進むと、しりもちをついた程度で骨折することがあります。特に高齢の女性は注意が必要です。若年者でも事故や腫瘍などが原因で胸椎圧迫骨折が起こることがありますが、それほど多くはありません。
骨粗鬆症が原因となる胸椎圧迫骨折の症状は、痛みが背部や腰部に発生します。骨折した椎体の破片が脊柱管内に入り込み神経を圧迫すると、下肢のしびれや痛み、麻痺などの症状が現れます。圧迫骨折は予防が重要です。若いうちから骨粗鬆症にならないための食事と運動、年をとったら転倒などしないような注意が必要です。

(治療について)

椎体圧迫骨折の治療では安静臥床および体幹装具(コルセット)による保存的治療をまず行なっています。疼痛が強く長期間の臥床安静を要する危険性の高い状態の時には、経皮的椎体形成術(椎体内骨セメント注入術・B K P、V B S)を行なっています。圧迫骨折後に椎体の変形が残存し腰曲がり腰痛をきたした場合には、脊柱後弯変形矯正固定術を行なっています。

脊柱側弯症

成長期の子供さんは側弯変形が進行しやすいのです。
学校側弯検診で要診察とされたら、民間療法へ向かう前に、整形外科(脊椎、側弯症外来)の受診をおすすめします。当院では側湾症学会に所属する専門医師が側弯症外来を行っています。

側弯症の治療
1. 装具療法

側弯のカーブが進行していないケースでは、変形の度合いに応じて装具療法を使い分けています。カーブが浅い状態では、夜間装具を用いて、患者さんに負担の少ない治療を心がけています。

2. 手術療法

残念ながら側弯カーブが進行し手術が必要となったケースでは、より安全な技術*を用いて矯正手術を行うことを心がけています。
*安全に手術を行う技術について

  • 術中脊髄誘発電位モニタリングによる安全管理
  • 術前自己血貯血および、術中自己血回収装置による無(他家血)輸血手術
  • 術中C Tナビゲーションシステムを用いた安全な手術
  • 術前3D患者適合立体模型作成による正確かつ安全なスクリュウ挿入

その他の当院で行なっている脊椎の新しい技術

  • 外視鏡手術
  • 低侵襲腰椎前方固定術
  • 低侵襲腰椎後方固定術
  • 術中CTナビゲーションシステム
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