心電図と血圧を計測しながら、速さと傾斜が徐々に増していくベルトコンベアーの上を歩きます。心電図や血圧に明らかな異常が見られたり、胸痛や胸部圧迫感があったり、足の疲れなどで運動を続けることができなくなるまで歩いて頂き、運動中・運動後の心電図や血圧の変化を記録します。この検査を行うことで、運動負荷で誘発される労作性狭心症や不整脈が検出可能となります。検査時間は約30分です。歩きやすい服装でお越しください。
トレッドミル負荷心電図検査と同様に心電図や血圧計を装着しながらベルトコンベアーの上を歩いて検査を行いますが、顔に密着するマスクをつけていただき運動中・運動後の呼気中の酸素や二酸化炭素の濃度を計測します。この検査を行うことで、どの程度の運動まで酸素を効率よく使えるかが分かります。また、心臓リハビリテーションの際にどれ位の強さの運動をどれだけの時間行えばよいかの運動処方を決定することが出来ます。
ホルター心電図は24時間携帯型の心電図です。睡眠中を含む日常生活中の心電図波形を24時間連続で記録します。不整脈や狭心症の診断や重症度を調べるために行い、自覚症状のない発作の心電図変化も捉えることができます。胸に5つの電極をテープで貼り付け、ICメモリーを内蔵した小型の記録器を腰につけて普段通りの生活をしていただきます。ただし、装着中に入浴は出来ません。何か症状がありましたら記録器のボタンを押して行動記録用紙に症状のあった時刻や内容を記録してください。検査時間は約24時間で、解析結果は8~10日でわかります。
失神の原因は大きく
の3つに分けられます。
心原性失神は15%程度とされています。
不整脈に伴う失神は、症状と不整脈を同時に認めて診断されます。失神発作のみでは原因はわかりません。
植込み型心電図計は約3年間心電図を記録する事が可能です。失神発作を繰り返し、原因として不整脈が強く疑われる方で原因特定ができない方へ使用する事が認められています。
ホルター心電図と同様に胸に電極をテープで貼り付けるとともに、上腕に血圧測定用のカフを巻きつけ、30-60分毎に自動的に血圧を測定し記録します。携帯型24時間血圧計を使用することで、家庭での1日数回の血圧測定や診察室での血圧測定よりも詳細な評価が可能となり、患者さん固有の血圧変動を反映した心血管障害の予測が行えます。また、睡眠中や起床時を含めた一日の血圧値とその変動をとらえることで、血圧の変動とそのパターンを認識し、高血圧治療をより安全かつ効果的に行うことができます。
結果に関しては、血圧値は数分でわかりますが、心電図を含む解析結果は数日後となります。
ABI は閉塞性動脈硬化症の診断や加齢・高血圧・脂質代謝異常症・糖尿病・肥満などによる動脈硬化の指標として有用です。
仰向けに寝た姿勢で四肢の血圧と脈波を同時に測定して、脈波が血管内を伝わる速度をみることで、下肢の血管の詰まり(ABI)や動脈硬化の程度(PWV)を算出します。
通常は寝た状態で両腕、両足首の血圧を測定すると、足首の方がやや高い値になります。ところが血管が詰まり気味になると、その部分の血圧は低くなり、足首の血圧と腕の血圧の比を求めれば血管の詰まり具合を知ることができます。ABI が0.9未満となる脚があれば、その脚の動脈が詰まり気味である(動脈硬化の疑いがある)ことを表しています。
皮膚潅流圧は、CLI(重症虚血肢)のアセスメント、難治性潰瘍の治癒予測、四肢切断レベルの判定に重要な指標となります。約10分間安静に保ち、仰臥位にて下肢の一部(足趾、中足など)にレーザーセンサ及びカフを装着します。カフを加圧し、皮膚微小循環を途絶させます。カフの圧を徐々に下げ、皮膚微小循環が回復(再灌流)した時のカフ圧を皮膚灌流圧と決定します。
現在、SPP < 30 mmHg の場合は重症虚血肢、SPP ≧ 40 mmHg であれば 潰瘍治癒の可能性が高いと考えられています。
2cm×3cmの超音波発生端子(探触子)にゼリーを塗って胸部に密着させると、探触子から出た超音波(人間の耳には聞えない高い周波数の音波)が体内にある心臓や血液などに当たって反射され再び探触子に返ってきます。超音波を反射した物の位置や動きをリアルタイムな動画としてカラー表示することで、心臓や血管の形態や動き、中を流れる血液の様子などを詳細に観察し記録します。
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)や弁膜症、各種の心筋症、先天性心疾患、心臓腫瘍などの診断や重症度判定、心臓内血栓(血液の塊)などの合併症の診断に非常に有用です。体には無害で短時間に多くの情報を得られ比較的経済的な検査ですので、治療効果を判定したり手術時期を見極めたりするために定期的に繰り返して行うことがあります。検査時間は10-30分です。
先端部に探触子を埋め込んだ胃カメラのような検査器具を飲み込んで頂き、心臓のすぐ背側にある食道から心臓を観察する超音波検査です。皮下脂肪や肺などが邪魔をしないので、経胸壁心エコー図よりも鮮明な画像が得られます。心臓内の血栓(脳梗塞の原因にもなる血の塊)や弁膜症、心内膜炎、心房中隔欠損、上行大動脈の解離(急性大動脈解離)などを観察するのに特に有用です。検査時間はのどの麻酔を含めて20-30分です。終了後1時間(麻酔が切れるまで)は飲食できません。
当科では木曜日午前に睡眠時無呼吸専門外来を開いています。外来で夜間の動脈血酸素飽和度を測定する簡易型検査を行って睡眠時無呼吸症候群が疑われた患者さまには、入院精密検査ポリソムノグラフィーを受けていただきます。この検査は睡眠脳波、眼球運動、筋電図、心電図、胸腹部呼吸運動、呼吸気流、経皮的動脈血酸素飽和度、体位、いびき音などを同時に測定することで、以下のようなことが正確に診断できます。
入院は同室者の影響を避けるため、原則個室で検査を行っています。当日午後から入院して、病気や検査についてのオリエンテーションを受けていただいた後、夜間に検査を行います。検査中も室内歩行ができる新しい検査機器を使用しています。診断と治療効果判定を別々に行う場合は1泊2日、1回の入院で行う場合は2泊3日を原則にしています。退院日は午前中に退院できます。
当院では2021年2月に320列のCT装置を導入し、同年10月よりFFRct解析が可能となりました。FFRctは、心臓CTとして撮影した画像をスーパーコンピューターで解析し、狭窄病変が見つかった場所での冠血流予備量比(FFR)を数値と色で示すことで、カテーテル治療(PCI)が必要かどうかの判定に役立てる方法です。
従来は、特に狭窄度が50~75%程度の中等度狭窄だった場合には、心筋シンチグラフィーやカテーテル検査など追加の検査が必要でした。FFRct解析は、外来での検査が可能で、既に撮影されたCT画像データを用いて解析を行うため追加のX線被爆や造影剤の使用がなく、痛みを伴わない患者さんに優しい検査です。
上図の例では、左冠動脈前下行枝中部の狭窄病変により、末梢が赤色で示され、FFR値が治療を考慮する0.75-0.80以下にまで低下しています。
FFRct解析は保険が適応されますが、1割負担の方で約1万円の検査費用が別途かかります。代わりにCT検査の費用が返還されます。
*但し、冠動脈バイパス術後、左冠動脈主幹部~前下行枝近位部に冠動脈ステントが留置されている、石灰化が著しい、心臓CT撮影時のアーチファクトが強い、などの場合には解析できないことがあります。
心臓核医学検査は、短時間で体内から消失する安全な放射性物質を注射し、心臓の筋肉(心筋)に取り込まれていく様子を体の表面から撮影してコンピューター処理を行います。放射性物質の種類によって、心筋の血のめぐり(心筋血流)や動き(壁運動)、活動性(脂肪酸代謝)、心臓交感神経の状態などを三次元表示することができます。
心筋シンチグラフィーは狭心症、陳旧性心筋梗塞などの冠動脈疾患の心筋虚血評価に使用されることが多く、当院でも運動負荷・薬物負荷心筋シンチグラフィーの検査を多く実施しています。運動負荷心筋シンチグラフィーはエルゴメーター(自転車)をこいで頂いたあと、運動直後と3時間後の2回撮影をして運動時と安静時の心筋血流分布を比較します。薬物負荷心筋シンチグラフィーは末梢冠動脈を拡張する薬剤を前腕皮静脈より注入し運動時と類似の状態を作り、運動負荷の時と同様、注入直後と3時間後の2回撮影を行い、末梢冠動脈の拡張状態と安静時の心筋血流の比較を行います。一回の撮影時間はいずれの場合も約20分で、仰向けに寝た姿勢で実施します。
心筋シンチグラフィーの最大のメリットは造影剤を使用しない点です。進行した慢性腎臓病、特に糖尿病性腎症を有する患者さんは、冠動脈疾患発症のリスクが高い一方、造影剤使用による腎機能増悪のリスクも高いため、まずは心筋シンチグラフィーによる精査をお勧めしております。
当院では、心臓専用の血管造影装置 (PHILIPS FD10; 写真左) 1台と、下肢血管や頭部腹部にも使用する汎用機の血管造影装置 (PHILIPS Azurion; 写真右) 2台を用いて、待機例、緊急例、治療例をあわせて年間1000例以上の冠動脈造影検査 (CAG) および下肢動脈造影検査等を施行しています。CAG施行の際、必要であれば左室造影、冠攣縮誘発試験、FFR/iFR測定、右心カテーテル検査、心筋生検等も追加して施行しています。とはいえCAGが施行されるのは冠動脈疾患を疑った患者さんのごく一部であり、安定されている患者さんにはまずは心電図、心臓超音波検査に加えて冠動脈CTや負荷心筋シンチグラフィーを施行し、臨床経過ならびに上記の諸検査の結果をもとにCAGの必要性を十分に検討してから、患者さんにCAGをお勧めしています。CAG施行の際は、極力患者さんの負担が少ない手首の血管から局所麻酔下にアプローチし、細い管 (カテーテル) を上肢の動脈から大動脈を経て冠動脈の入口部まで進めて冠動脈内に造影剤を適宜注入、造影された冠動脈を動画として記録します。丁寧なカテーテル操作はもちろんのこと、造影剤腎症の予防、穿刺部のケア等にも十分留意しております。CAGは20-30分ほどで終了し、穿刺部が手首の血管の場合は検査後の安静は原則不要です。
iFRは冠血流予備量比(FFR)のようにアデノシンなどの血管拡張薬の必要がなく、瞬時の病変評価が行えるという利点があります。iFRの診断精度はFFRと同等であることがRCTで示されております。
当院ではびまん性病変に対しては、『SyncVision』というアプリケーションを用いて血管造影上にiFRに関する情報のガイダンスとマッピングを示すことで病変評価を合理化し、最適な治療を目指しております。
不整脈は刺激伝導系(心臓が動くための電気的回路)の異常あるいは刺激を受ける側の心筋の異常によって生じるとされ、電気生理学的検査(electrophysiologic study, EPS)はこの異常がどこに存在するのかを調べる検査です。通常、足の付け根や首、鎖骨下の静脈より数本の電極カテーテルを心臓まで挿入し、心臓の中から詳しい心電図をとります。さらに心臓に電気的な刺激を与えることにより、刺激伝導系の機能を評価したり、不整脈を誘発させることで原因、治療方法を調べます。脈が遅くなる徐脈性不整脈ではペースメーカの適応判断に利用でき、脈が速くなる頻脈性不整脈ではアブレーション治療や植え込み型除細動器の適応、治療方針決定に役立てることができます。入院が必要な侵襲的検査ですので、適応・詳細については主治医にご確認ください。
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